赤坂・赤坂璃宮
個性的な冷やし中華が三種類そろう。イタリア料理からヒントを得たという「海鮮入りトマト冷やしそば」は、ドライトマトとトマトピューレによるソースを和えた極細卵麺に、ザク切りの生トマト、さっと茹でてプリッとした食感を生かした蟹、イカ、海老、ホタテをのせた冷やし麺。トマトの赤、蟹の朱白、香菜の緑が美しい。ドライトマトによって水っぽくなく、トマトの甘みが凝縮されたソースが魅力で、ほんのりと効かされたにんにくの風味が食欲をそそる。夏を実感させる逸品。
「チャーシユー入り冷やしラーメン」は、ほのかな酸味を利かせた上品な滋味を持ち、脂を丹念に取った冷たい鳥のスープに、シコシコとした歯触りが魅力の極細卵麺がからむ冷たいスープそば。具は、細切りにされてもなお、ジューシーで甘く香り高いチャーシュー、わけぎ、豆もやしに千切りの赤ピーマン。
「焼き物のせ冷やしそば」は、璃宮自慢のチャーシューやあひるの焼き物などを具に従えたそばを、胡麻風味のツケダレにつけて食べる。いずれも千六百円。
中野・高揚
漢方の田七人参粉を打ち込み、青竹で踏んで作るコシの強い自家製麺が人気。「冷やし中華」は、細切りのチャーシューと胡瓜に、クコの実だけの具で千三百円とやや高いが、食べると、その味の深さとバランスのよさに納得する。なにより鳥スープと醤油、酢、砂糖によるスープが絶妙。一口目はやや物足りなく感じるものの、自然な甘み、程よい酸味、穏やかな滋味が丸く溶け合って、食べ進むごとにうま味が増していく。そのスープに絡む平打ち麺も、所々によれた口触りとモッチリとした歯応えで応える。必要最小限に計算された具も見事。後味の切れもよく、うま味の余韻だけが残ってまた食べなくなるは必至。けれんみのないまっとうな冷やし中華。
その他、ずわいがにの太い足が豪勢に乗った「カニ冷やしそば」三千円、「鳥(細切り)冷やしそば」千八百円、「五目冷やしそば」二千五百円。
閉店
天現寺・浅野
「新中国家庭料理」の看板を掲げる「浅野」は、身近な素材を使った創作惣菜による人気店。涼麺は三品。
最も一般的な「五目涼麺」千二百円は、具にチャーシュー、蒸し鶏、クラゲ、海老、薄焼玉子、トマト、胡瓜を配し、タレは、生姜、紫蘇、芝麻醤、辣油、杏露酒と、醤油、酢、砂糖、マスタード、スープなどを加えたもの。甘酸っぱいタレの穏やかな味わいが魅力。
「香菜伴麺(ネギと香菜の和えそば)」千円は、白髪ネギと香菜にクコの実を散らした、見るからに涼しげな麺。胡麻油、醤油、砂糖、酢からなる甘酸っぱいタレに、シャキシャキとしたネギと香菜の歯触りと香りが加わる。食べ進むと、最後にかけるという、山椒の香りを移した熱々のオリーブ油が香り、独特な香菜、ネギ、胡麻油の香りが重なっていく。この幾重にも重なりあった香りの層が、シンプルな麺料理をより奥深くさせている。
「高菜とチャーシューの和えそば」千百円は、高菜と滷水で煮込んだ牛すね肉を、醤油、豆板醤、牡蠣油で炒め、麺と和えたもの。よく混ぜて食べれば、高菜の酸味、すね肉のうま味、干し海老の風味などが、甘辛い味の中で一体となる。
閉店
恵比須・龍天門
甘みと強烈な辛みが同居した、人気の「合桃坦々麺」に加えて昨夏登場したのが、「龍天門特製冷やし坦々めん」千四百円。冷たいスープそばで、薄茶のスープにオレンジ色の溶岩流のような油が点在する。具は、微塵のネギと韮ねザーサイと豚肉をピリッと辛く炒め合わせたもの。一口スープをすすれば、胡麻風味の甘い味わいとコクが広がり、あとから裏に隠れていた辛味が現れ、しっかりと口腔に残る。この甘みと辛味のバランスが絶妙で、気がつけば最後の一滴まで飲み干すは必至。後味も爽快。冷たい麺料理ながらも、食後に汗が滲み出るのも愉快。
尾山台・陸春坊日月飯荘
他に例をみないユニークな冷やし麺が三種類。中でもおすすめは、「牛南麻辣涼麺」二千円。牛バラ肉の角切りと胡瓜細切り、白髪ネギ、微塵切りネギ、香菜を具に、黒胡麻ダレと辣油をによるタレを和えた麺で、イカスミスパゲッティの如く、真っ黒。麺をすすれば黒胡麻の豊かな風味が口一杯に広がり、次に潜んでいた強烈な辛味が飛び出して口が火事となる。極細全蛋麺の確かなコシも相性よし。肉もしっとりとしてうまし。
「魚翅涼麺」二千八百円は、フカヒレを豪勢にのせた涼麺。タレはスープをベースに酢醤油で調味したまろやかな味わい。フカヒレ、麺、細切り白菜の異なる歯触りが楽しい。その他、辛味が味を引き締め、香菜の香りがアクセントになった「鳥の細切り冷やしそば」二千円。
御茶の水・新北京
冷やし麺を数種そろえる。創業来の人気は、「新北京醋滷麺」二千円。冷たいスープ麺で、優しい滋味を持つ鶏のダシから脂を取り去ったスープを、酢、塩、日本酒で仕上げる。麺はコシの強い中太麺。具は、プリッとした歯触りを残した海老、韮、山椒の香りをつけた胡麻油で炒めた豚挽き肉と角切りの豚肉。あっさりとした上品な味わいで、ほのかな酸味も食欲をそそり、食の細い夏でもつるりと胃袋に収まってしまう。かつおダシを醤油で調味し、ほんのり酸味を加えたタレと、辛いソースで和えたネギとチャーシューの細切りを具に添えた「伴葱麺」二千円もぜひ。
神保町・新世界飯店
「五目冷やしそば」、「エビ冷やしそば」ともに上品な味わいでおいしいが、この店ならではのおすすめは「少子冷麺(挽き肉と唐辛子の冷やしそば)」千二百円。冷たい麺の上に、赤い唐辛子が点在する、見るからに辛そうな鶏挽き肉の辛み炒めがどろりとかけられた麺料理だ。湯気の上がる鶏挽き肉炒めに箸を突っ込み、中細麺を持ち上げれば、器の底には酢醤油と辣油によるタレがたっぷりと注がれており、そのタレ、上のアンを十分に麺にからめながら食べ進めば、辛、酸、甘、熱、冷、さまざまな感覚が渾然一体となって押し寄せてくる。中でも辛みはひときわ強く、口の中はヒリヒリとし、汗をかく程であるが、酸味、甘味との絶妙なバランスのよさで一気に食べ終えてしまう。後味も爽快。しばらく経つと無性に食べたくなる、後を引く冷やし麺である。
小川町・龍水楼
一見どの町にもでもありそうな普通の中華料理屋だが、その丁寧な仕事ぶりによる料理は、中国料理の誠実さと暖かみを痛感させる。夏場の「冷やし中華」八百五十円もまたしかり。上に胡瓜、チャーシュー、蒸し鶏、薄焼玉子がのせられ、溶き芥子を皿縁に添えた、どこでも見かけるお馴染みの姿であるが、一口すすればその穏やかな味わいの虜となる。秘訣はタレ。スープ、酢、醤油、砂糖、芝麻醤を使ったタレは、甘味、酸味がとんがることない丸い味わいで、豊かな胡麻の香りともに、麺に優しく絡む。じんわりとうまさがつのっていき、食べ終えたときに「ああおいしい」と、箸をおかせる。チャーシューも蒸し鳥もしっとりと肉汁を含む上等な味わい。
平河町・東生園
山形名物「冷やしラーメン」を出す。鶏ガラダシをベースにした醤油味のあっさりとしたスープに、中細ストレート麺。具は、蒸し鶏、もやし、アルファルファ。程よい冷たさのスープは甘味があり、脂が丁寧に取られてあってさらりと舌の上を過ぎる。普通のラーメンより長めに茹でた麺は、ゴツゴツとしたかなりのコシで、冷たいスープとの相性もよし。さらにあっさりといきたい人は。酢を少したらしてもいいだろう。
浅野 渋谷区広尾5−8−14東京建物ビルB1
3447−4641 11;30〜14:30
17〜22 日曜休み
龍天門
離宮 港区赤坂2−14−5プザミカドB1
5570−9323 11:30〜15
17:30〜22 無休み
新北京 千代田区神田駿河台1−1山の上ホテル本館
B1 3293−2311 11〜21 無休
高揚 中野区新井3−1−11 3386−7607
11〜21 金曜
揚子江
龍水楼 千代田区神田錦町1−8 3292−1001 11:30〜14 17〜20 日祝
陸春坊日月飯荘 世田谷区等々力7−3−4
11:30〜14:30 15〜21:30
3704−3591 無休
新世界飯店 千代田区神田神保町2−2
3261−4957 11〜22 日祝休
東生園 千代田区平河町1−6−11
3222−0100 11:30〜15 17〜22 日曜祝日休み
写真はイメージ